高萩　幸男コンサルタントコラム - 聞く技術 -| PERSONAL VISION INSTITUTE |-

高萩　幸男
　(Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
　+ 面接官のトーク術（79)

■聞く技術　(2010/05/12)

これから初めて面接を経験する人事マンに
「何か参考になるものを」と尋ねられたら
間違いなくこの本を薦めます。
「プロカウンセラーの聞く技術（東山紘久著）」

著者は「臨床心理士」。
カウンセリングも面接も根っこは同じ。
まさにプロカウンセラー（面接官）としての
「奥義」が示されています。

例えば、第４章「相づちの種類は豊かに」
先ず冒頭にこうある。
「プロのカウンセラーの聞き方は、極端に言えば
相づちだけでもっているようなもの。だから
それぞれが、種類豊かに、しかも一人ひとりが
工夫した独特の相づちをもっている。」

私個人の反省として
相づちが貧相だと常々感じているのですが
「ハイやエエの相づちだけでは、全ての素材を
文化包丁一本で切るようなものです。それも研がずに」と
耳の痛い話が続きます。

確かに応募者との会話が深まらないケースとは
こちらが
的外れな質問しているか
相手の発言に適当な相づち（反応）を返しているか
どちらにしても
こちら（面接官）に問題があったと
過去の苦い経験が蘇ってくる。

この章の後半
これまた自分の経験とピッタリ符合することが
書かれています。
「話し手Aが、偶然の出来事を、少し興奮気味に
あなたに語ったとしましょう。（中略）
ちょっとした区切り（間）ができたときに
へえー、偶然に、不思議なことが…とくり返すのです。
すると相手はただ聞いてもらった感じだけでなく
話しの内容と自分の心情が理解されたと感じます。」

この話しのポイントは
相手が使った言葉を「そのまま」くり返すということ。

私も同じような経験があります。
ある課題に直面した応募者がその頃のことを
「しんどかった…」と思い出す。
「そりゃ…、しんどいですよね…」とそのまま返す。
たったその一言が
上手く相手の気持ちにフィットした時は
互いの距離が一気に縮まりその後の会話も進む。

別の応募者では似たようなケースで失敗も。
「しんどかった…」と応募者。
「そんなしんどい課題、誰だって逃げ出したくなりますよね」と私。
「そうじゃないんです！逃げたいと思ったことありません…」
相手の気持ちを先読みしたつもりが空回り。

この章は最後こう締めくくられます。
「プロの聞き手が使わないのに、ふつうの人によく使われる
相づちがあります。それは、わかる、わかるわ、よくわかる
という相づちです」

応募者のことを「わかった」つもりで
相づちを打ったときは反発をくらい
「わからない」と思って一生懸命に聞くときに
心を開いてもらえる…。
皮肉なものですね。
（次回に続く）

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