高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■山と谷に着目する (2009/11/07)

世の中には、話しベタ、あがり症の人も
たくさんいらっしゃるわけで
面接が弾まないことだってある。

そんな時、面接官って
慌てるんですよね。

私も時々やらかすのですが
焦って、一方的に喋ってしまう。

しどろもどろの面接がようやく終わり
手元のノートを見たら
応募者の名前以外は「真っ白」…。

やはり面接は応募者が「主役」。

応募者が話しやすく
しかもその人の特徴がよく分かる。
そんな「鉄板」な話題はないものか?

その答えは未だ見つかりませんが
私なりに意識しているのは
その人が歩んできたこれまでのキャリアの
「山」と「谷」に着目すること。

簡単にいうと
山(自慢話)と谷(苦労話)に
話題を振り向けるようにしています。

特に、中途採用の場合
最初に入社した会社、そこでの苦労話を
話してもらうことで、面接の最初のリズムを
作るよう心掛けています。

誰しも社会に一歩足を踏み入れたときの
印象は鮮烈に覚えているもの。

「入社当初、大変だったことは?」の質問に
「ありません」と答える人はそういない。
(そう答えた人もいましたが、経験上そういう人は
余程の「自信家」か「鈍感」のどちらかでした。)

決して能弁である必要はなく
訥々とでも話し始めてもらえればしめたもの。
後はそこから会話を拡げていけばイイ。

またそのとき、応募者が何を話したのか?
つまり何を「苦労」と感じたのか
苦労といわないまでも
何に「戸惑い」、どこに「違和感」を覚えたかに
注目することで、その人の特徴が浮かび上がってくる。

例えば
ある人は、上司やお客様との人間関係について話し始め
ある人は、最初の売上がなかなか取れなかったことを挙げる。
それは紛れもなく
当時の応募者にとって苦手な領域であり
そこから性格的な影響も読み取れる。

もう少し話しを続けてもらえれば
その辺りがより明確になります。

先の例でいうと
人間関係を挙げた人は「社交的・協調的」と思っていた自分が
難しい上司・お客様と出会ったために苦労したのか
元々「内向的・一匹狼的」な性格だから上手くいかなかったのか。

「苦労話」の腰をこちらが折らない限り
核心は応募者自らが話してくれる。

拙いのはこのタイミングで
面接官が流れを変えること。

パターンA「いや〜、その気持ちよく分かりますよ。
私も以前あなたと同じようなことがありましてね。
というのも私の前の上司というのが…」

パターンB「そうですか…。じゃ次のお話に移りましょうか」

と、やっちゃうことです。

世の中の面接官は
往々にして募集の段階から携わっている。
ということは
大勢の人前で会社説明することなんか
朝飯前という人が実に多い。

そして、そういう人が面接をすると
どうしても「一言」多くなる。
あるいは
相手の「沈黙」が怖くなり
むりやり新しい話題に展開してしまう。

面接官は「聞き上手」であれ。
よくいわれることですが
周囲を見回しても
「話し上手」と両立できているケースは
とても少ないようです。
面接官は少し話しベタ、あがり症くらいが
ちょうど良いのかもしれません。
(次回に続く)


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