高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■面接官の提案力 (2016/01/12)

「お客様、それお似合いですよ!」

洋服選びの最中、そんな声を掛けられ
「そ、そうかなぁ」とニンマリするか
「その手に乗るか」とダンマリになるか。

これ即ち、販売スタッフの提案力の差
「買おう!」と動機づけできるかどうかの差ですが
面接官にも今、同じ力が求められていると感じます。

面接官とは、あくまでも採否を決める人。
ですが、それに終わらず
「この人!」と思う相手には
「ウチの会社・仕事に向いているよ!」と提案し
「一緒にやろう!」と動機づける。

もはや、面接官が評価だけをやれば良い時代ではない。
提案力があるかないか、これが企業の採用力を左右する。
私はそう思います。

さて、一見、畑違いの販売スタッフと面接官
どちらも提案力が大事、というお話ですが
だからと言うべきか、やり手の両者には共通点があります。

たとえば
@「自分の経験・体感を会話に盛り込む」

販売スタッフなら
「試着したとき、自分が実際に使ったときどう感じたのか、を伝えて
商品をPRする」

面接官なら
「応募者だったとき、自分がこの会社に入社したときどう感じたのか、を伝えて
自社をPRする」

(例)「私も学生のときは、面接って緊張してね…」
→(緊張するのが当たり前、それを受け容れる会社です!)

(例)「正直、最初は私もこの会社でやっていけるのかな、なんて思ったけど…
→(でも、こうしてやっています、あなたも大丈夫!)

またこんな共通点もあります。
A「客観的事実・データに基づいてその気にさせる」

販売スタッフなら
「相手のチャームポイントを伝え(ほめ)、『だからお似合いです』と商品を勧める」

面接官なら
「応募者の提出書類に書いてあること、発言内容を承認して(ほめ)
『だからウチの会社・仕事に向いている』と自社を勧める」

(例)「あなたがエントリーシートに書いてくれた長所、『責任感』は
ウチの会社でも今すごく求められていて…」
→(ウチはあなたが活躍できる会社です!)

ただこの場合、応募者の言う「責任感」が何を意味するのか、どの程度かを
確認する必要があります。

(例)「ウチの会社で『責任感』というと『最後まで投げ出さない』ことが
すごく求められるんだけど、そんな経験したことありますか?
最後まで投げ出さずにやりきって、人に喜ばれたとか、ほめられたとか
何か達成できたとか…どんな小さなエピソードでも良いので」

このように、自社の「求める人物像(採用要件)」を
・「具体化(責任感とは、最後まで投げ出さないこと)」し
・「例示(喜ばれた・ほめられた・達成できた)」し
・「ハードルを下げる(“どんな小さなエピソードでも良い”)」と
応募者から見て答えやすく、面接官にとっても評価しやすい。

また「客観的事実・データに基づく」という観点で言うと
前回も書きましたが、「適性(性格)検査」の導入が何より。

検査結果という客観的事実・データを背景に質問を重ね
「この人!」と思える応募者に自社を勧める。

ただし、くれぐれも
「応募者様、弊社がお似合いです!」の連発、安売りにはお気をつけください。
(次回に続く)


※このコラムは2015/12/18発行のメールマガジンを再掲したものです。


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