高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■感情を引き出す (2015/08/10)

前回は
「人に誇れるようなものありません…」という控えめなタイプ
「学生時代にガンバったことは?」と、こちらが質問しても
「アルバイトしか、他は特に…」と、うつむいてしまう応募者から
どう話を引き出したら良いか。そんなお話でした。

こんな場合、私が心掛けているのは
「話」を引き出す前に「感情」を引き出すこと。

何やら小難しそうに聞こえますが
簡単に言うと
「そう、そのとおり!」「ちがう、そうじゃない!」という
イエス・ノーの感情をどうやって引き出すか。
それだけを考えています。

イエス・ノーの感情が引き出せたらしめたもの。
後は、放っておいても向こうから話がドンドン出てくる。
そのために
「今あなたの言いたいことはAですか?Bですか?…」と
よく聞きます。

本来、面接では
「アルバイトから得るものはありましたか?」といった
「イエスかノー」や「AかBか」で答えるような
クローズド・クエスチョンはNG。

「アルバイトから何を学びましたか?」といった
自由回答できるオープン・クエスチョンを使うのが王道とされますが
それも時と場合によりけり。

面接という緊張感タップリの場面
それも、いきなり冒頭から
オープン・クエスチョンを多用して
きちんと回答できる応募者が果たして何人いるか。

なので、私はバンバン
クローズド・クエスチョンをぶつけます(笑)
こんな感じで。

面接官「アルバイトで一番意識していたことは、売上を取ること?
お客さんに喜んでもらうこと?」
応募者「・・・・・」
面接官「長く続けること?やるべきことをやること?」
面接官「それとも他に…」「どうですか?」

控えめな応募者だと、これくらい選択肢を示し、じっくり聞いて
ようやく話し始めるかどうか、というのが私の実感です。

お分かりのとおり
ここでのポイントはAかBかという「二者択一」ではなく
「四、五者択一」にすること。
そして、その一つひとつの選択肢に対する応募者の反応を
観察しておくことです。

「目は口ほどに物を言う」といいますが
こちらからの問いかけに
「そう、そのとおり!」「ちがう、そうじゃない!」という
イエス・ノーの感情が必ずあり
無口な人でもそれは表情に表れます。

先ほどの例で言うと
「アルバイトで一番意識していたことは、効率よく稼ぐこと?」と
最初にインパクトのある選択肢を入れておくと
「ちがう、そうじゃない!(ノー)」の感情が出やすい。

そして、その応募者が例えば
「お客さんに喜んでもらうのが…嬉しくて…」と
ポツリポツリ話し始めたときに
「そうだよね。お金だけじゃないよね」と一言添えると
奥にある思いが噴き出し、一気に会話が弾む。

テクニックに走る面接は個人的に好きではありませんが
応募者の意図をしっかり聞き取るためには
これも必要なトーク術かと考えています。

応募者が口ごもる「アルバイトしか…」というエピソード。

その意図をきちんと拾えば
「売上を取る」なら成果志向が強い。
「お客様に喜んでもらう」なら顧客志向が強い。
「長く続ける、やるべきことをやる」なら責任感が強い。
そんな人物像が浮かんでくるのですから。
(次回に続く。)


※このコラムは2015/7/31発行のメールマガジンを再掲したものです。


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