高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■意図のある人の面接 (2009/09/27)

前回( http://www.pvi.jp/column/takahagi/no89 )
は、面接において
応募者の「行動意図(なぜそうしたのか?)」を確認する
重要性についてお話したところで終わりました。

『意図のある人
自分の頭で考えて行動している人は
こちらがいくら「WHY(なぜ?)」を投げても
きちんと打ち返せます。』

と、いったお話を途中挟みながら。

今回はこの続きを。

いつも同じネタ元で恐縮ですが
「プロフェッショナル・仕事の流儀」のHP
茂木さんとともにキャスターを務める住吉さんの
ブログにこんな内容を見つけました。

国宝級の仏像など、文化財輸送のプロとして登場した海老名さんを
住吉さんが「WHY」で質問攻めしています。

住 「なぜ、マスを使うんですか?」
海 「手で持ちやすく、また安全に運ぶためです」
住 「なぜ、マスの中にも色々敷いてあるんですか?」
海 「緩衝用です」
住 「なぜその緩衝材が、スノコのように間を空けて敷いてあるんですか?」
海 「指が入る隙間を作るためですよ。さらに、振動も押さえられます」
住 「その上に紙と重ねて敷いてあるのは、なんですか?」
海 「ネル素材の布です」
住 「なぜネルなんですか?」
海 「薄葉紙だけだと、仏像がこすれるんです」
住 「なぜ、さらし布ではなくネル布なんですか?」
海 「厚さが必要だからです」
住 「なぜ白いんですか?」
海 「白いと、像の底からなにかがもしも出てきた場合、すぐにわかるでしょう」

いかがでしょうか?
一つひとつの輸送方法、使う道具の選択に
海老名さんの明確な「意図」が
感じられませんか?

これがもし実際の面接ならば
これらの方法・道具に行き着く過程で
どのような「試行錯誤(プロセス)」があったのか?
それを確認することで
海老名さんの特徴がより明確になるはずです。

話しは変わりますが
普段、私が一回の面接(インタビュー)に
かける時間は90〜120分。
事前にそのことをお話しすると
不思議そうな顔をされます。

その顔には大抵こう書いてある。
「そんな長い持間、一体何を聞くの?」
「90分も必要ないと思うけど…」

しかし、一つひとつの行動にしっかりとした
「意図」のある人の場合
それを丹念に確認するだけで
あっという間に時計の針は進みます。

そしてこういう人のインタビューは
する方、される方
双方にとって実に「楽しい」もの。

「話が盛り上がった面接で採用した人はイイ人が多い」

こんな経験則、皆さんも思い当たりませんか?
「楽しい」から余計に、時間が過ぎるのが早いと
感じるのかもしれません。

先の住吉さんのインタビューがまさにそう。
二人のやり取りを文字で追うだけで
「なるほど!」と目を輝かせる住吉さんや
痒いところに手が届く質問に
「よくぞ聞いてくれた!」と満足げに話す
海老名さんの表情まで見えてきそうです。

逆に、自分の頭で何も考えずに行動する人
つまり行動意図の弱い人のインタビューは
会話が弾まない。
これも皆さん、少なからず経験あるはず。

面接官「どうして、○○したのですか?」

応募者A「どうしてと聞かれても、特に理由は…」
応募者B「そういうルール(決まり)なので…」
応募者C「昔からずっとそうしているので…」

このあたりが
行動意図の弱い人の答えベスト3でしょうか。

そして面接(インタビュー)が終わった応募者の顔には
こう書いてある。
「ほらね、90分も必要なかったでしょ!」
(次回に続く)


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