高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■「無難」からは「無難」しか生まれない (2012/12/13)

アメリカ球界への挑戦を公言していた
今年のドラフトの目玉、大谷選手が
先日、日本ハムへの入団を正式に表明しました。

「一番力のある選手を 1位指名する」
これがチームの方針だと監督自らが明言。
指名拒否のリスクも顧みない、ユニークな球団だといえます。

また、この大谷選手に限らず、他の指名を見ても
「地肩の強さ」「足の速さ」「飛距離の長さ」といった
一芸に秀でた選手が多く、ここにもチーム方針が強く感じられます。

「速い球を投げる」ことや「球を遠くに飛ばす」ことは
教えることができない、持って生まれた才能だとか。

その「天賦の才」という可能性に賭ける。
もちろん他球団も同様の考えを持ってはいますが
往々にして、それは1位指名だけ。

2位以下の指名選手を評するコメントからは
「走攻守のどれも素晴らしい(=バランス重視)」
「○○2世(=ハイパフォーマーの二番煎じ)」
といった本音が透けて見えてきます。

この辺りは、企業と重なるのでないでしょうか。

荒削りなところは目をつぶって一芸に秀でた選手を指名する。
そんな明確な方針を持った球団が少ないのと同じく
個人の特長を一点買いして採用する企業もあまりお目にかかりません。

裏を返すと
球団も企業もルーキーイヤーから活躍する即戦力を求めるあまり
外れの少ない人材に走っているともいえます。

大量採用時代でもあるまいし
少数精鋭の採用状況でリスクが張れないという心情も
よくよく分かるのですが
こうして採用した人材が入社後に大化けしたという話は
残念ながら聞いたことがありません。

外れのない人を採ろうとすると
どうしても「平均点の高さ」を求めます。
そうなると「減点法的」な選考基準に傾きます。
短い面接時間のなか
あれやこれやと確認しても相手の実像には届かない。

「無難」な採用手法では、「無難」な人しか採れない。
これは昇格でも全く同じです。
「無難」な昇格審査では、「無難」な管理職しか生まれない。

話を元に戻すと
一芸に秀でた選手を思い切って指名する日本ハムというチームは
「育成」に相当の自信を持っているようです。
「荒削りな部分はウチに入ればキレイに磨いてあげる」
そんなチームカラーを感じます。

これも企業と重なりますね。
即戦力を求めるところは
荒削りな人材を「育てる」ことに苦手意識を持つことが多い。

苦手だからと無難な人ばかり採っていると
育てる体制が整わない。
そして、育てる体制が整わない企業は学生にとって魅力がない。

逆に、人を育てることに自信のある企業にはどんどん良い人が集まる。
皮肉なものです。

採用に課題のある企業さまは、自社の育成(体制・仕組み)を
一度点検されてはいかがでしょうか。
(次回に続く)



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