高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■見る力 (2012/07/23)

唐突ですが、最近
中原淳さんの(東京大学准教授)のブログを読んで
いたく共感したので、
今日は先ずその内容をご紹介します。
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先日、ある看護師さんとお話をしました。
 その看護師さんによると、新人看護師と熟達者の看護師さんで
もっとも異なるのは、「患者の様子を見る」ということなのだ、と。
 曰く、初心者の看護師が注視するのは、自分の処置のプロセスと、その結果。つまり、自分の活動の成否にしか、認知的資源を配分できない、ということですね。
 それに対して、熟達者になると、処置前の患者の様子を、何も言わず「見る」。さらには患者のベッドのまわりに、変わった様子がないかを「見る」。患者の背後に、どのような家族模様、人間関係がありそうかを「見る」。
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 似たようなことを、ある熟練のファシリテータの方が言っておられました。この方は、企業内部で組織変革などのお手伝いをなさっている方です。
 曰く、
 ファシリテータをはじめた頃は、役員会での発言についていくだけで精一杯でした。つまり、最初は「耳」しか使えない。「耳」で聞いて、適切な問いをかえす。
 しかし、熟練したファシリテータは「目」が武器になるのです。経験を積み重ねてくると、「会議の風土が見えて」くるのです。会議で、誰が、どのように発言し、それに対して、誰が、どのような反応をするかで、会社の中のパワーバランスが「見えて」くるのです。
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「見ること」について、先日伺った鍼灸師の先生は、こうもいいます。「見る」ためには制約がいる、とも。
 鍼灸師が、患者を「見る」ためには、枠がなくてはなりません。治療方針が、まずは決まっている。それを「枠」として、ひとつ、鍼を入れる。鍼をいれるときの感覚、それがすっと入るのか、はねっかえるのか、そのとき患者さんの身体は、どんな動きをするのかを「見ます」。それによって、次の鍼を入れる場所を決める場合もあります。
(中略)
「方針」がなければ「見る」ことはできません。「方針」がしっかりあって、はじめて「見ること」ができる。見ることで「枠」をそのつど、そのつど、修正するのです。
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これを読んで、面接も全く同じだと思いました。
耳ではなく目を使う。
相手の話を「聞く」のではなく、相手を「見る」。
こういう感覚がとても大切なんだと
再認識しました。

また、ここで
鍼灸師の先生のいう治療方針とは
面接に於ける「採用基準(求める人物像)」。

その基準に沿って
一つ、ひとつ質問という鍼をいれ
応募者の反応を「見る」のが
面接だという解釈もできますね。

前回、前々回と、このメルマガで
阿川佐和子さんを取り上げてきましたが
今回、このサイトを読んで
改めて感じるのは
阿川さんの「見る力」。

彼女の本のタイトルは「聞く力」ですが
聞くという行為のさらに前
ゲストの反応を見る力のとても高い人だなと
つくづく感心します。

相手の話を
・助長させる促し
・掘り下げる投げかけ
・切り返す問いかけ
一瞬のうちにこの3つを使い分ける。

阿川さんの「聞く力」ではなく
それを可能にする「見る力」にこそ
面接スキル上達のヒントがありそうです。
(次回に続く)


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