高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■素人にもわかるように (2009/10/16)

今日はこれまでと少し話しを変えてみます。

前職を辞め、今の仕事に就いて間もない頃
面接官として自信が持てない時期が
しばらく続きました。

一企業の人事マンとして
自社に精通した立場でやる面接と
畑違い、様々な業界のクライアント企業に
代わってやる面接。
両者には天と地ほどの差が。

実際、昇格面接など
普段の仕事の話を聞いているだけなのに
その話しに追いつくことさえままならない。

聞けばきくほど、焦りを呼び
焦ればあせるほど、質問が的を外す。

「分からないのは自分の質問が拙いからだ!」
「どういう質問をすれば理解できるのか?」

自責、自問自答をいくら繰り返しても
結局答えは見つかりませんでした。

悩んだあげく「究極の質問(!?)」をついに発見。
それは
「素人(私)にも分かるように説明していただけませんか?」の一言。

質問によって相手を丸裸にしようと力むのではなく
自分の「無知」をさらけ出し、相手から「教えて」もらうことが
一番だという結論に至りました。

以降、この質問を様々な職業、役職の人にぶつけてみました。

すると思わぬ発見が。

それは
この質問の後、とても分かりやすく
自分の仕事や取組んでいる課題について説明できる人と
説明できない人の2種類のタイプがいるということ。

またそれによって
その人の実力もおおよそ見当がつくということ。

とかく経験の浅い面接官は
難しいことを難しく話す人を「あの人はスゴイ!頭がイイ!」と
プラス評価する傾向がありますが
多くの人をインタビューして、そうではない、むしろ逆だと
実感するようになりました。

例えば、中途採用の面接
話しの途中に耳慣れない専門用語・業界用語が登場したら
すかさず先の質問をしてみる。

「今の言葉を素人(私)にも分かるように説明していただけますか?」

この質問にうまく対応できない人、具体的にいうと
・説明のための説明が延々続く
・専門用語を説明するために新たな専門用語を繰り出す
・「これだから素人に話すのはイヤなんだ」という表情を見せる
経験上、こういう人は「要注意」です。

「週刊こどもニュース」などの番組でキャスターを務める池上彰さん。
この方の話し方を観察するとホンモノ(実力者)の特徴が見えてきます。
つまり先程のタイプとは全く逆
・説明が完結
・難しい言葉、専門用語を決して使わない
・複雑、抽象的なことを身近なことに例える、置き換えて説明できる

私が出会った人の中にもこういう特徴を持つ人が
たくさんいらっしゃいました。
そしてこういう人を採用・登用したクライアント企業から
後悔の声を聞いたことがありません。

もちろん、これが全てとは思いませんが
リーダーとして多くの部下・関係者に
自らの思いを「伝える」力
彼らを「巻き込み」、「やる気にさせる」力と
例の質問に対する答え方(=説明力)には相関関係がある。
私はそう確信しています。

最近、私はあえて自分が熟知している業界や仕事の話しにも
あえてこの質問をぶつけ、説明力を見るようになりました。

皆さんにもお薦めします。
中途採用の面接など、社外の方にはもちろんのこと
昇格面接や部下との面談といった自社の社員にも
ぜひこの質問をお使いください。

「社外の人に話すつもりで、分かりやすく説明してください」と。

ただしこの場合、私と同様
「意地悪」といわれることを覚悟して。
(次回に続く)


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