高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■二つの“きく” (2018/01/19)

「ウチの社長、『もっと働け!』言うたり
『残業するな!』言うたり…」と苦笑いの人事マン。
一方、その横には、我関せずで、高笑いの社長。

我々の訪問先では“いつも”の光景です(笑)
いや、弊社のお客様に限らず
社長とは「朝令暮改」じゃないと
務まらない仕事かもしれません。

かつて、バブルの頃は「大量採用」を宣言し
“泡”がはじけた途端、「採用ゼロ」を命じる。

真面目な人事マンがそれを忠実に実行した結果
今や、“働かない”アラフィフを大量に抱え
“働き盛り”のアラフォーが足りない…

恥ずかしながら、私もその“片棒”を担いだ一人
真面目な人事マンでした。

「朝令暮改」、もう少し堅い表現で言うと「二律背反」。
社長ほどではないにしろ
人事も、上手に自己矛盾を“飼いならさないと”いけない。
今、振り返ってそう思います。

例えば面接。
「二重人格になれ、二枚舌を使え」とは言いませんが
二つの顔を使い分けてこそ一丁前。

一つは、当然ながら「評価者」の顔。
そしてもう一つは
見過ごされがちな「共感者」の顔。

面接とは言え、所詮は会話ですから
応募者と気持ちを通わせないと
面接以前に“言葉のキャッチボール”が成立しません。

やはりここは、応募者の話をしっかり聞くこと
例えるなら、明石家さんまサン風に
「ほいで、ほいで」と会話を弾ませ、同じ空気を吸うことが大事。

ある本にこんなことが書いてありました。
「きく」という日本語には
「聞く」と「尋ねる(質問する)」という意味が含まれるが
この二つには大きな差がある。

「聞く」とは話し手の意図に沿っているが
「尋ねる」とは質問者の意図に沿っている。
だから、尋ねてばかりいると
自分が望んでいる情報ばかり集める結果になり
話し手の立場から発した情報が得られなくなる。

これに私なりの解釈を加えると
評価者の顔で「きく」とは「尋ねる」こと
共感者の顔で「きく」とは「聞く」こと。

「尋ねる(質問する)」ばかりだと
面接官の意図どおりに進行できるのは良いが
その意図に沿った回答しか得られず、判断に偏りが生じる。

要は、単純に自分(自社)のモノサシに合う、合わないで
判断するので、同じタイプばかり集めてしまう。
必要な人材を多面的に評価できず、見落とす可能性がある。
(それと、モノサシに合う人だけを選り好みしていると
ぶっちゃけ、採れませんしね…)

やはり「聞く」ことを意識しないと
応募者の全体像が見えてこない、正しい評価はできない。

さすがに面接で「ほいで、ほいで」は使えませんが
皆さんは、会話を弾ませるフレーズ持っていますか?
応募者と同じ空気を吸っていますか?


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