高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■“野暮”をしつこく (2013/10/04)

面接後、こういう感想が応募者から聞けたとき
「今日の出来は悪くなかった」
面接官として少しホットする…。

前回に引き続き、そんな経験談です。

その感想とはこの3つ。
1.すみません、まとまりなく、べらべら、話してしまって
2.すみません、変な話、いたしまして…
3.こんな話で良かったですか?

ある大学の先生も私と全く同じ経験をされているようで
その先生の言葉をお借りしつつ、今回は2から。

「すみません、変な話、いたしまして…」の「変な話」とは
たいてい応募者にとって非常にパーソナルで、しかも偏った話。

ただし、面接とはあくまでもその「パーソナルな話」を聞く場なので
こういう感想はマルだと思っています。

一見、関係なさそうな個人の趣味の話や幼少期の思い出が
その人を形成するうえでとても重要な意味を持つことがよくあります。

たとえば子供の頃に夢中になっていた遊び。
それが何で、どんな様子だったかという話は
何かしら、その方の“今”と繋がっている。

そして、ひとしきりそういうお話で盛り上がると
「そうそう、そういえば思い出したんですが…」と
さらに深い記憶が呼び起こされるときがあり
それは
その後の個人に大きく影響する決定的なエピソードであることが多い。

もちろん、子供の頃の話ばかりではなく
ベテランならば新人時代の記憶から
こうしたエピソードを引き出せることもあります。

ある種、こうした会話の“脱線”をどう起こし、どう“本線”に戻すのかは
面接官にとって、この上ない腕の見せ所だと言えます。

次に、3の「こんな話で良かったですか?」についてですが
これは応募者にとっては、特別だと感じていない、当たり前のことの
質問が続いたときの感想。

その業界(会社)の常識がよそでは非常識。非常識がよそでは常識。
日々、色々な業界の方々と接していると、本当に実感します。

個人もこれと同じではないでしょうか。
応募者にとって何の変哲もない普通の話が
私にはとても新鮮で、個人の特徴と密接に繋がっていると感じたときは
しつこく食い下がって聞きます。

つまり「ド直球な野暮な問い」が延々続くわけですが、そこから
個人の、ひいては業界(会社)の特徴までもが見えるときがあります。

応募者に嫌がられても“野暮な問い”をしつこくできるか。
これもまた面接官の腕の見せ所かもしれませんね。

以上、これらはキャリア面接、中途採用をイメージしたものですが
新卒採用でも基本は変わらないと思います。
彼、彼女らがこうした感想を口にしないだけで
顔にはちゃんと書いてあります。
(次回に続く)


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