高萩 幸男
(Yukio Takahagi)
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面接官のトーク術(79)
■一人二役 (2014/09/26)
遅い夏休みをいただいて沖縄に出かけました。
そこは離島。
船を降りた私たちを迎えに来てくれたのは、真っ黒に日焼けした若い男性。
重い荷物も軽々と車に積み入れ、ペンションまで案内してくれました。
さて、遊び疲れて夕食のテーブルに着くと
先ほどの彼が、今度は料理を運び、一品一品丁寧に説明をしてくれます。
見渡すと、ペンションのスタッフは彼を含めて4名
お客はウチを含めて8組。
「小さな宿なら、一人二役も当たり前か…」
そう思いつつ、妻がスパ・マッサージのことを聞こうと
お水を持ってきてくれた女性に声を掛けると
「私がエステティシャンです」との返事。
やはりこちらも一人二役でした。
思えば、私が足を運ぶ会社さまでも、中小なら一人二役は当たり前。
それが大企業になればなるほど、組織が細分化され
役割・業務が固定的になっていきます。
「人がいないから仕方ない」。
一人二役というと、忙しさが強調されて否定的に聞こえますが
個人の成長にとっては
果たしてマイナスなことばかりでしょうか。
もちろん法に触れるような長時間労働は論外ですが
スポーツ選手がそうであるように
余力を残したワークからは大きな成長は望めません。
最近、インタビューでお会いする方々の
部署名がやたらと細かいことに気付きます。
人事で例えるなら、以前は「人事部採用課」といった括り。
それが最近は「人事部採用課新卒係 ○○エリア第1地区担当」といった
細かさで業務が規定されていることに驚きます。
当然、そうなると
業務の幅が狭い分、どれほど深さがあるのかという「専門性」を
ポイントに、こちらはインタビューするのですが
往々にして、そういうケースに限って「狭く浅く」になっている。
縦割り組織の連携や調整に時間を取られ
専門性を身に付けるどころではないようです。
「エリア第1地区と第2地区の担当は終日会議、そして会議中にかかってきた
第3地区宛の電話に『担当じゃないので分かりません!』と冷たく言い放つ」。
そんな印象です。
応募者が一人「何役」なのか、つまり、いくつ「顔」があるか。
公式の役割・所属が先ほどのとおり細分化されている場合は
非公式でも構わないので、できるだけ「顔」を探すこと。
極端にいえば
それが後輩の「愚痴聞き係」でも、宴会の「鍋奉行」でも構わないので
「顔」を見つけて、そこで何をやっているかを聞き出さないと
実像の見えないまま面接が終わってしまう。
今そんな時代を迎えていると感じます。
沖縄の話に戻ると…。
予約してあったシュノーケリングツアーに
ふらっと表れた、これぞ海人(うみんちゅ)という風貌のガイドさん。
やたらペンションのことに詳しいと思って
後日スタッフに聞いたら、何とペンションのオーナーでした。
同じく、そのスタッフによると
部屋の掃除だけをする人(=一人一役)はパートタイマーとのこと。
シンプルでとても分かりやすい「人事制度」だと思いました。
そして、いよいよ帰る日
港まで車で送ってくれるというのは、例のスパを担当してくれた女性。
小柄な彼女が、自分の腰位置より高いスーツケースを
左右それぞれに持とうとしたときは
さすがの私も「一役」買いました。
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