高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■尊敬より共感 (2010/02/25)

「価値観の相違」
離婚会見でおなじみ(?)の言葉。

面接に置き換えると
「社風に合う(合わない)」
といった判断でしょうか。

皆さんはこの判断、どういう質問から
導き出していますか?

新卒採用ならこの質問が一番多いかも。
「あなたが尊敬する人は誰ですか?」

お時間あれば「面接 尊敬」でグーグル検索してください。
361000件の相談・(不思議な)解答が寄せられています。
やはり面接官にとって「鉄板の質問」なんですね。

ケチをつける気はないのですが
どうも私には良く分かりません。
「この質問から何が分かるんでしょうか?」
「どういう答えが○なんでしょうか?」

例えば、こんな面接のケース。
Q「あなたが尊敬する人は誰ですか?」
A「石川遼くんです」
Q「なぜ?どういうところが?」
A「若くして賞金王になったところです!」
これを聞いた面接官は
「この人、成果にこだわるタイプかも」と考える。
あるいは
A「ファンを大事にするところです!」
これを聞いて
「顧客満足に敏感なタイプかも」と考える。

実際はこんな単純じゃないにしろ
この質問から推測できるのはこの程度が限界。
果たしてこの推測は当たっているんでしょうか?

「尊敬する人」という質問から聞こえてくるのは
「そうなりたい」と考える「目標」の姿。
応募者の「実像」とはずいぶん距離があるような。

どうしてもこの質問を使うなら、さらに
Q「(遼くんのように)あなたが成果にこだわって取組んでいることは?」
Q「(遼くんのように)あなたが周囲の人に喜んでもらった経験は?」
と続けて聞かないかぎり何も見えてこないのでは。

私がもし質問するならば
「尊敬」よりも「共感」を聞いてみたい。

「あなたが最近、共感できた誰かの行動・考えとは?」
「最近それイイな、自分も同じ考えだなって感じたことは?」

共感した相手は誰でも良いのですが
その人のどんなところ(行動・考え)に共感したかを聞きたい。
それが分かれば
応募者とその人との「共通点」が見え
少しは価値観(らしきもの)が掴めるかも。

あくまでも個人的意見ですが
尊敬よりも「共感」の方が
自分との距離が近い対象を選びやすい。
また尊敬が、自分にはマネができない凄い行為を
連想させるのに対して
「共感」は既に自分もやっていること
普段から意識していることを連想させる。

むろん尊敬にしろ、共感にしろ
応募者個人の「思い/考え」には変わらないので
作り話をしようと思えばきりがない。

なので、先に書いたように
(石川遼ではなく)あなた自身が取組んでいることや経験という
「行動事実」を話してもらい、内容を吟味する必要があります。

話しを戻して…。

「共感」というと固い表現ですが
要は「何に腹から喜べるか、何に悔し涙を流すのか」。

ここが一枚岩の組織ほど強いものはない。
そういう組織にしたいから面接で「共感」にこだわる。
(これがズレていると「離婚(=退職)」になっちゃう)
この景気のなかでも元気な企業さまの共通点を考えると
採用のあり方って
こういうことじゃないのかなと最近つくづく感じます。
(次回に続く)


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