高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■教えてくださいという 姿勢 (2011/10/05)

最近改めて思うのですが
面接を「聞くこと/聞き出すこと」と捉えると
焦るばかりで上手くいかない。

ここはやはり
いかに「話してもらうか」に視点を切り替え
その「お手伝い」として面接官が存在するのだと
肝に銘じたい。

話しは変わりますが
先日、ある番組で総合診療のベテラン医師が
こんな話しをされていました。

総合診療医とは
原因の分からない症状に悩まされる患者の病名を
問診によって診断するお医者さんのこと。

その彼がまだ駆け出しの頃
ある患者さんから
「先生はいいですね。若くて、健康で」と距離を置かれ
うまく問診できなかったそうです。

「自分は病に苦しむ患者さんに同情することはできても
共感することはできない」
悶々と悩み、医者を辞めようとまで思い詰めたとか。

しかし時が経ち、こう考えられるようになる。

「人間はいずれ年を取る、歩けなくなる、癌にもかかる。
そして死んでいく。」

「自分もやがて死にゆく一人であり、ここに居る患者さんの
いわば後輩。先輩、どうかあなたの症状を詳しく教えてください。」

それからは問診が少しずつうまく行くように…。

ここまで深く相手に共感できるかはさておき
しかし、面接でも
「教えてください、聞かせてください」という
姿勢がなければ
応募者は心を開いて話してくれないのは同じこと。

また、これも問診と共通するのですが
擬態語(的表現)を交えると面接がスムーズにいく。

「お腹、シクシク痛い?それともキリキリ痛い?」
お医者さんがよく使う
この「シクシク」とか「キリキリ」です。

例えば、応募者が「喜」の感情を表したときに
ただ「嬉しいですね」と受け流すのではなく
「嬉しくてグッときますね」と返してみたり
あるいは
「サイコーですね」「気持ちいいですね」
「ヨッシャーって感じですね」
「ホットしますね」「ウキウキしますね」
「報われますね」「感激ですね」…。
と相手の「喜」の感情を探りつつ
それを形容する言葉を添えてみる。

「嬉しい」という
たった一言に込められた感情を探ることは
とても困難ですが、それを「掘り当てた」とき
応募者との距離が一気に縮まる。

恐らく皆さんも経験があるかと。
私なりに思う
これが面接に於ける「共感」の場面。

もちろん応募者が表すのは「喜」ばかりではない。
喜怒哀楽。それぞれの感情に相応しい言葉を
いくつ持っているか?

面接官としてキャリアを重ねるということは
自分自身が様々な経験を通して
喜怒哀楽の感情や
それらを表現する言葉を蓄えることではないでしょうか。
(次回に続く)


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
Copyrightc 2014 PERSONAL VISION INSTITUTE CO.,LTD. All Rights Reserved.
このコラムの全部または一部を(株)パーソナルヴィジョン研究所の事前承諾なく、
いかなる形式・媒体にも複写掲載することを禁じます。


コラムテーマ:<面接官のトーク術>
 バックナンバーも是非ご覧下さい □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
角がとれる前(2020/03/13) <面接官のトーク術>
天然から養殖へ(2020/01/06) <面接官のトーク術>
面接中のメモ(2019/11/01) <面接官のトーク術>
思いやり(2019/10/04) <面接官のトーク術>
「心」に働きかける(2019/07/19) <面接官のトーク術>
空機を読む力(2019/02/22) <面接官のトーク術>
良い「型」(2018/12/14) <面接官のトーク術>
お節介で言い出しっぺ(2018/09/10) <面接官のトーク術>
統制と自由を問う(2018/07/24) <面接官のトーク術>
逆風が人を育てる(2018/07/06) <面接官のトーク術>
型破りと形無し(2018/02/26) <面接官のトーク術>
二つの“きく”(2018/01/19) <面接官のトーク術>
地道に、愚直に、丹念に(2018/01/18) <面接官のトーク術>
“志望動機”って聞く意味あるの?(2017/10/13) <面接官のトーク術>
高評価な人と、そうでない人の差(2017/08/24) <面接官のトーク術>
志を語り継ぐ(2017/08/10) <面接官のトーク術>
天使のように大胆に、悪魔のように細心に(2017/04/28) <面接官のトーク術>
当たり前のことを当たり前に(2016/08/29) <面接官のトーク術>
自分から素顔を見せる(2016/06/03) <面接官のトーク術>
引き算の面接(2016/04/12) <面接官のトーク術>
リクルーターとアセッサー(2016/02/19) <面接官のトーク術>
面接官の提案力(2016/01/12) <面接官のトーク術>
スーパースターばかりが必要か(2015/11/12) <面接官のトーク術>
“辞めない”面接(2015/09/28) <面接官のトーク術>
感情を引き出す(2015/08/10) <面接官のトーク術>
誇れるものがないという人(2015/06/29) <面接官のトーク術>
本当の独自性(2015/05/01) <面接官のトーク術>
VSOP人材論(2015/03/13) <面接官のトーク術>
てまひまかけて(2015/01/09) <面接官のトーク術>
相手の時間を大切にする(2014/11/14) <面接官のトーク術>
一人二役(2014/09/26) <面接官のトーク術>
行動チェックリスト(2014/08/01) <面接官のトーク術>
問題提起の輪を広げられる人(2014/06/16) <面接官のトーク術>
ブレーキではなくアクセルが踏める人(2014/04/25) <面接官のトーク術>
物語に惑わされるな(2014/03/07) <面接官のトーク術>
個人としての動機(2014/01/24) <面接官のトーク術>
「見る」ではなく「観る」(2013/12/16) <面接官のトーク術>
“野暮”をしつこく(2013/10/04) <面接官のトーク術>
まとまりなくべらべら話してもらえたら(2013/08/23) <面接官のトーク術>
ベテランあるある(2013/06/07) <面接官のトーク術>
失敗から得た糧(2013/04/22) <面接官のトーク術>
ストーリーをつなげる(2013/03/08) <面接官のトーク術>
ワクワクさせられるか(2013/01/25) <面接官のトーク術>
「無難」からは「無難」しか生まれない(2012/12/13) <面接官のトーク術>
絶対評価と相対評価(2012/11/02) <面接官のトーク術>
グループディスカッションの弊害(2012/09/07) <面接官のトーク術>
見る力(2012/07/23) <面接官のトーク術>
時間軸に沿って(2012/06/08) <面接官のトーク術>
脱線を楽しむ余裕(2012/04/16) <面接官のトーク術>
学生だけの責任か(2012/03/01) <面接官のトーク術>
面接官も管理職も 根っこは同じ(2012/01/19) <面接官のトーク術>
一つ上の目線で(2011/11/21) <面接官のトーク術>
教えてくださいという 姿勢(2011/10/05) <面接官のトーク術>
応募者に見出しをつける(2011/07/01) <面接官のトーク術>
もし面接官がドラッカーを読んだら(2011/05/16) <面接官のトーク術>
面接官には不向きなタイプ(2011/04/07) <面接官のトーク術>
基本中の基本(2011/02/14) <面接官のトーク術>
自らの仮説を疑う(2010/12/21) <面接官のトーク術>
腹落ちを問う(2010/11/04) <面接官のトーク術>
似顔絵描きであれ(2010/09/27) <面接官のトーク術>
バイアスの悲劇(2010/08/10) <面接官のトーク術>
成長の転機(2010/07/16) <面接官のトーク術>
「なぜ」よりも「何が」(2010/06/20) <面接官のトーク術>
イメージすることの大切さ(2010/06/04) <面接官のトーク術>
聞く技術(2010/05/12) <面接官のトーク術>
選ばなかった理由(2010/04/09) <面接官のトーク術>
社員の共感(2010/03/19) <面接官のトーク術>
尊敬より共感(2010/02/25) <面接官のトーク術>
話の腰を折る(2010/02/04) <面接官のトーク術>
距離を縮め、いつ切り込むか(2010/01/15) <面接官のトーク術>
「書く」のではなく「描く」(2009/12/17) <面接官のトーク術>
表情と話の長さ(2009/11/26) <面接官のトーク術>
山と谷に着目する(2009/11/07) <面接官のトーク術>
素人にもわかるように(2009/10/16) <面接官のトーク術>
意図のある人の面接(2009/09/27) <面接官のトーク術>
WHYを中心に(2009/06/25) <面接官のトーク術>
WHYをどこに集中させるか(2009/06/02) <面接官のトーク術>
WHY・WHAT・HOW(2009/05/11) <面接官のトーク術>
興味・関心を質問に(2009/04/14) <面接官のトーク術>
Copyright © 2024 Personal Vision Institute co.,ltd. All Rights Reserved.