高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■話の腰を折る (2010/02/04)

筋道を立ててきちんと話せる応募者ばかりなら
助かるのですが、そう上手くはいかない。

さっきまで取引先の話をしていたかと思えば
急に部下について話し始め
その話しにこちらが頭を切り替えた途端
今度は商品に話題が移る。

「困ったなぁ」と内心思いながらも
話しの腰を折るのはとても勇気が要るもの。
そして、どこで流れを戻そうかと
タイミングを見計らっているうちに
時間だけが過ぎていく…。

これが学生さん(新卒)相手だと
それほど苦労しないんですけどね。
遠慮なく相手の話を止められるし
あちこち話が飛んでも、学生生活の
たかだか数年の範囲ならいくらでも補追できる。

かつて
父親ほども年上の応募者を目の前にしたとき
その人の話が
「現在(部長)から30年前(新人)」まで一気に飛んだとき
さすがに困りました。

こうなったら
応募者の話しを止める
自分なりの「ルール」を作るしかない!
そう考えるようになりました。

そのルールとは?

例えば応募者がこんな話しをしたとします。
「○○という問題を解決したくて、先ずAさんに
アドバイスをもらいに行きました…」

それを聞いて、私は頭の中にこのような図を思い浮かべます。
(あるいはノートに簡単にメモします。)

     『アドバイスをもらいにいく場面』
           |
           |
      ―――――――――――――――・・・
      |    |    |
      |    |    |
(1層)  Aさん  Bさん  Cさん


「先ずAさんに」ということは
その後BさんやCさんといった人が出てくるはず。
その人たちのことを聞き忘れてはいけないので
こんなツリー図をイメージするわけです。

さらに応募者がこう続けたとします。
「Aさんに色々とアドバイスをもらいました…」

今度は新しいツリー(2層目)を加えます。


     『アドバイスをもらいにいく場面』
           |
           |
      ―――――――――――――――・・・
      |    |    |
      |    |    |
(1層)  Aさん  Bさん  Cさん
      |
      |――――――――――――――・・・
      |      |     |
      |      |     |
(2層)  a     b    c



「色々と」という以上、アドバイスは一つだけじゃない。
それを全て聞かないといけないので
「Aさん」の下にアドバイス(a・b・c)をイメージするわけです。

で、肝心の「ルール」ですが
@この図からさらに話が広がりそうになったら、そこで相手の話を「止める」。
Aこのツリー図の話しを全部聞くまで新しい話題(場面)に「移らない」。

「ルール」と呼ぶにはお粗末ですが
私はこの2つを大切に守っています。

例えば、応募者が引き続いてAさんからのアドバイスを
実行する場面を話し出したとする。

「アドバイスaを実際にやってみたら、次々にトラブルが起こって…」
といった話になっても
新たなツリー(3層目)は加えない。(ツリーは2層まで!)

「次々に」というからには
複数のトラブル(a・b・c)に直面しているはずですが
これ以上、範囲を拡げてしまうと
聞き漏らすツリー(ハコ)が出るかもしれないので
ここで相手にストップをかける。

「(話しを止めてスミマセン)ところでAさんからは
他にどんなアドバイスを受けたのですか?」
「(少しお話が戻るのですが)Aさん以外には
誰にどんなアドバイスをもらいましたか?」
と、こんな感じで。

あるいは応募者の話がまったく違う場面に「飛ぶ」とする。

「実は異動前の部署でも同じような問題に直面したことがあって…」

面接官としては実に興味深い話しですが
「そのお話はもう少し後で聞かせていただきます」と
再度このツリーに話しを戻す。

そもそも話があちこちに飛ぶ応募者とは
自分で話しの整理ができない人。
その整理の「お手伝い」をするのも面接官の重要な役割。

そう考えるようになってからは
「遠慮なく」話しの腰を折れるようになりました。
(次回に続く)


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
Copyrightc 2010 PERSONAL VISION INSTITUTE CO.,LTD. All Rights Reserved.
このコラムの全部または一部を(株)パーソナルヴィジョン研究所の事前承諾なく、
いかなる形式・媒体にも複写掲載することを禁じます。


コラムテーマ:<面接官のトーク術>
 バックナンバーも是非ご覧下さい □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
角がとれる前(2020/03/13) <面接官のトーク術>
天然から養殖へ(2020/01/06) <面接官のトーク術>
面接中のメモ(2019/11/01) <面接官のトーク術>
思いやり(2019/10/04) <面接官のトーク術>
「心」に働きかける(2019/07/19) <面接官のトーク術>
空機を読む力(2019/02/22) <面接官のトーク術>
良い「型」(2018/12/14) <面接官のトーク術>
お節介で言い出しっぺ(2018/09/10) <面接官のトーク術>
統制と自由を問う(2018/07/24) <面接官のトーク術>
逆風が人を育てる(2018/07/06) <面接官のトーク術>
型破りと形無し(2018/02/26) <面接官のトーク術>
二つの“きく”(2018/01/19) <面接官のトーク術>
地道に、愚直に、丹念に(2018/01/18) <面接官のトーク術>
“志望動機”って聞く意味あるの?(2017/10/13) <面接官のトーク術>
高評価な人と、そうでない人の差(2017/08/24) <面接官のトーク術>
志を語り継ぐ(2017/08/10) <面接官のトーク術>
天使のように大胆に、悪魔のように細心に(2017/04/28) <面接官のトーク術>
当たり前のことを当たり前に(2016/08/29) <面接官のトーク術>
自分から素顔を見せる(2016/06/03) <面接官のトーク術>
引き算の面接(2016/04/12) <面接官のトーク術>
リクルーターとアセッサー(2016/02/19) <面接官のトーク術>
面接官の提案力(2016/01/12) <面接官のトーク術>
スーパースターばかりが必要か(2015/11/12) <面接官のトーク術>
“辞めない”面接(2015/09/28) <面接官のトーク術>
感情を引き出す(2015/08/10) <面接官のトーク術>
誇れるものがないという人(2015/06/29) <面接官のトーク術>
本当の独自性(2015/05/01) <面接官のトーク術>
VSOP人材論(2015/03/13) <面接官のトーク術>
てまひまかけて(2015/01/09) <面接官のトーク術>
相手の時間を大切にする(2014/11/14) <面接官のトーク術>
一人二役(2014/09/26) <面接官のトーク術>
行動チェックリスト(2014/08/01) <面接官のトーク術>
問題提起の輪を広げられる人(2014/06/16) <面接官のトーク術>
ブレーキではなくアクセルが踏める人(2014/04/25) <面接官のトーク術>
物語に惑わされるな(2014/03/07) <面接官のトーク術>
個人としての動機(2014/01/24) <面接官のトーク術>
「見る」ではなく「観る」(2013/12/16) <面接官のトーク術>
“野暮”をしつこく(2013/10/04) <面接官のトーク術>
まとまりなくべらべら話してもらえたら(2013/08/23) <面接官のトーク術>
ベテランあるある(2013/06/07) <面接官のトーク術>
失敗から得た糧(2013/04/22) <面接官のトーク術>
ストーリーをつなげる(2013/03/08) <面接官のトーク術>
ワクワクさせられるか(2013/01/25) <面接官のトーク術>
「無難」からは「無難」しか生まれない(2012/12/13) <面接官のトーク術>
絶対評価と相対評価(2012/11/02) <面接官のトーク術>
グループディスカッションの弊害(2012/09/07) <面接官のトーク術>
見る力(2012/07/23) <面接官のトーク術>
時間軸に沿って(2012/06/08) <面接官のトーク術>
脱線を楽しむ余裕(2012/04/16) <面接官のトーク術>
学生だけの責任か(2012/03/01) <面接官のトーク術>
面接官も管理職も 根っこは同じ(2012/01/19) <面接官のトーク術>
一つ上の目線で(2011/11/21) <面接官のトーク術>
教えてくださいという 姿勢(2011/10/05) <面接官のトーク術>
応募者に見出しをつける(2011/07/01) <面接官のトーク術>
もし面接官がドラッカーを読んだら(2011/05/16) <面接官のトーク術>
面接官には不向きなタイプ(2011/04/07) <面接官のトーク術>
基本中の基本(2011/02/14) <面接官のトーク術>
自らの仮説を疑う(2010/12/21) <面接官のトーク術>
腹落ちを問う(2010/11/04) <面接官のトーク術>
似顔絵描きであれ(2010/09/27) <面接官のトーク術>
バイアスの悲劇(2010/08/10) <面接官のトーク術>
成長の転機(2010/07/16) <面接官のトーク術>
「なぜ」よりも「何が」(2010/06/20) <面接官のトーク術>
イメージすることの大切さ(2010/06/04) <面接官のトーク術>
聞く技術(2010/05/12) <面接官のトーク術>
選ばなかった理由(2010/04/09) <面接官のトーク術>
社員の共感(2010/03/19) <面接官のトーク術>
尊敬より共感(2010/02/25) <面接官のトーク術>
話の腰を折る(2010/02/04) <面接官のトーク術>
距離を縮め、いつ切り込むか(2010/01/15) <面接官のトーク術>
「書く」のではなく「描く」(2009/12/17) <面接官のトーク術>
表情と話の長さ(2009/11/26) <面接官のトーク術>
山と谷に着目する(2009/11/07) <面接官のトーク術>
素人にもわかるように(2009/10/16) <面接官のトーク術>
意図のある人の面接(2009/09/27) <面接官のトーク術>
WHYを中心に(2009/06/25) <面接官のトーク術>
WHYをどこに集中させるか(2009/06/02) <面接官のトーク術>
WHY・WHAT・HOW(2009/05/11) <面接官のトーク術>
興味・関心を質問に(2009/04/14) <面接官のトーク術>
Copyright © 2025 Personal Vision Institute co.,ltd. All Rights Reserved.