高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■思いやり (2019/10/04)

ある会社さまから
「おもいやり」というテーマで
お話しする機会をいただきました。

日頃、何気なく使っているこの言葉。
改めて調べてみると
おもいやり=「思い」+「遣る(やる)」
「遣る」にはそこへ行かせるという意味があり
「思い(気配りなど)」を「相手に向ける」という
言葉だと分かりました。

ちなみに、最近ひらがな表記の多い「やる気」も
元々は「遣る気」だとか。
自らの「思い」を「相手に向ける」と理解すれば
「遣る気」と漢字で書く方がしっくりきます。

「遣る気がある」とか「ない」とか。
面接官なら必ず使うフレーズですが
先ほどの語源に基づくと
「遣る気」のある応募者とは
自らの「思い」を「面接官に向けられる」人。

なので、いくら「思い」が強くても
自己満足の域を出ないPRをドヤ顔で語る。
こちらに響かない志望動機を延々続ける。
こういう応募者は
面接官を「思い遣る」視点に欠けていると
言わざるを得ません。

一方で、自らの「思い」に自信の持てない人
それをうまく表現できない人がたくさんいます。
特に、面接に不慣れな学生だと
自己開示することを恥ずかしがったり
「思い」を伝えるボキャブラリーが乏しいために
「遣る気」がないと評価されることも多いのでは。

ならば、そういう応募者の「思い」を
上手に引き出してやる気配りが
面接官の「思い遣り」。

最近、学生たちと接して気になるのは
自分が傷つくこと
笑われたり、否定されたりすることをひどく怖がり
それを避けよう、やり過ごそうとする傾向が強いところ。

彼ら、彼女たちにとって
面接とは「ダメ出し」される場
面接官とは「怖い」人と思い、ビクビクしている。

いやいや
面接とは自分の「思い」を正直に伝える場
面接官とはその思いを「受け容れてくれる」人。
その空気を面接の冒頭、ド頭の1分でつくる。

これ、面接官なら誰もができること。
いや、実際にやってみると難しいけど
やろうとする気配りは応募者に伝わるもの。

今後いくらAIが面接に参入してきても
生身の面接官に勝てないのがこの「思い遣り」では?

応募者の言語化された思いを緻密に分析するAIに対し
言語化されていない思いを上手に引き出せる
(その空気が作れる)面接官。

AIの得意と勝負しても勝ち目はない。
ならば自分たちの得意を活かして協働しないと…。

「あ・な・た・は・い・り・ま・せ・ん」
そんな「思い遣り」のない評価が
AIから下されるかもしれません。


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