高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■ストーリーをつなげる (2013/03/08)

就活中の学生さんから相談を受ける機会がありました。

エントリーシートを拝見すると
色々なことが所狭しと、書き連ねてある。

「世界を相手に、高い技術力で勝負している企業を熱望。
そこで企画開発の仕事に就きたい、海外を相手に働きたい」

「大学では経営学部に在籍。
最近、ゼミ内でチーム対抗のプレゼン大会があり
優勝したことが嬉しかった」

「昨年、短期の語学留学に参加。
カリキュラムの一環で、地元の小学生に何かを教える
という課題があり、得意の書道を選んだ。
その時の感動が深く心に刻まれている」

「現在、スターバックスでアルバイトを頑張っている」
などなど…。

お気づきのとおり
このエントリーシートの問題は的が絞れていないこと。
アピールポイントが多すぎて、特徴が散漫になっている。

でももっと肝心な問題は
一つひとつのエピソードに繋がりがないこと
個人を表現する「ストーリー」になっていないところ。
なので、それぞれに質問を加えてみました。

すると
この学生さんのお父さまがメーカーの技術職で
かつては、日本製、このメーカー製であることが
海外から高く評価され
子供ながらに誇らしかったこと。

しかし、昨今はその技術力が他国に追い抜かれ
父親の淋しそうな姿を見るにつけ
「ぜったい、この仇を打ってやる」
「日本の素晴らしさを海外に知らしめたい」と
強く思っていること。

例のプレゼン大会では
企画案を練る段階で、他のメンバーがヒートアップしてしまい
途中、チームが分裂してしまったこと。

そこで、違う角度から改めて企画を模索してはどうかと
コツコツ関係資料を集めて、メンバーに見せたところ
皆が同意、企画がユニークなものになったこと。
教授や他チームからはそれが評価され優勝したこと。

でも、それはあくまでも裏方として動いたに過ぎず
人に喜んでもらうことに懸命になれるのは長所だが
人を引っ張るリーダーシップがないところが
自分の短所だと考えていること。

こんな事実が出るわでるわ。

なぜ技術力にこだわるのか?
なぜ企画開発なのか、海外なのか?
なぜ書道なのか、スターバックスなのか?
そして
なぜ自分にはリーダーシップがないなどと思っているのか?

話を聞くうちに
全体のストーリーや、学生さんにありがちな誤解が
はっきりと見えてきました。

と同時に
自分の真の特徴を理解できないまま
本番の面接に臨む人、たくさんいるんだろうなぁ。
とても「勿体ない」思いがしました。

決して、自分には聞く力があると言いたいわけではありません。

面接官が目の前に居る人の話を
ストーリーとして繋げて聞こうとする姿勢があるか
そこにエネルギーを傾けることができるかどうか。

ほんの少し、その差で優秀な人を採りそこなっている。
だとしたら企業にとっても
あちこちで「勿体ない」ことが起こっているのではないでしょうか?
(次回に続く)


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