高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■自らの仮説を疑う (2010/12/21)

「面接官は先入観をもってはいけない!」
よくいわれることです。
「ホンマかいな?」
どうも私は引っ掛かります。

以前ここでもお話ししましたが
先入観が「バイアス(歪み・偏見)」にならないよう
気をつけるのは当然として
でも面接が終わるまで
一切、応募者について先入観を持たない
というのも無理がある。

先入観という言葉の響きが悪いのであれば
「仮説」と置き換えてもよい。
いわゆる
「仮説・実行・検証・修正」のサイクルが
大切なのは仕事も面接も同じではないでしょうか。

面接で最も多く失敗するのは冒頭のケース。
つまり仮説がバイアスになり修正が利かない。
「この応募者はこういう人だ」と
頭から決め付けてしまう面接官。

そして意外に多いのが仮説を持たずに
面接を進めるケース。
当人としては「先入観を持つべからず」という
面接官の心得に忠実なのかもしれませんが。

さらに続けると
この仮説のない面接には二通りあります。
一つは
応募者が誰であっても
「同じ質問をする(質問を変えない)」面接。
新卒採用でよく見られますが
手元のメモを見ながら
そこに書かれた質問を淡々とする面接。
会話のキャッチボールは一切なく
流れ作業のように一問一答のやりとりを繰り返す。

もう一つは
応募者の話しを「一方的に受け容れる」面接。
応募者の考えや思いを好きなだけしゃべらせて
面接官はそこに介入しないカウンセリングのような面接。

どちらのタイプにしても
目の前の応募者が
「こういう特徴を持っているのでは?」という
仮説の無いまま面接を進めているという点では同じです。

もしも、ここに仮説があれば
その仮説に基づいた質問が実行され
果たしてそれがただのバイアスなのか
正しかったのかという検証がされるはず。

例えば「責任感の強さ」という仮説があるなら
それに紐つく経験・キャリアを応募書類から
探し出し、そこにフォーカスして質問する。
そして応募者の話しを聞きながら
それが
その時の応募者の立場や状況から考えて
やって当然というレベルなのか
やはり責任感という特徴として
評価すべき内容なのかを判断していく…。

と、ここまでは一般論。
今日の主題は実はここから。

「みなさんは面接でこのプロセスを何回繰り返しますか?」

「責任感の強さ」という仮説を
たった一度の「検証」で結論付けてよいものか?
私は自分が面接するときには
かなり執拗に検証しているつもりです。

「この仮説って、まさか、ひょっとして応募者に
うまく誘導されているのでは?」と考えながら。

決して相手を性悪説でとらえ
疑っているわけではありません(笑)。

ポイントは自らの仮説が正しいと性急に結論付けないこと。
「自らの仮説を疑う」ということです。

従って、先の例でいうと
責任感の強さを再度、別の角度から質問したり
あるいは「責任感の欠如」という
真逆の仮説が成立するような
経験・キャリアがないかを点検しながら
「仮説・実行・検証・修正」サイクルを何度も回します。

広く浅く質問するのではなく
狭く深く質問して自らの仮説を検証し
もし仮説に間違いがあれば修正する。
この繰り返しが大切だと思います。
(次回に続く)


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