高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

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 + 面接官のトーク術(79)
■統制と自由を問う (2018/07/24)

4年に一度、日本中がニワカのサッカーファンで溢れる時
その一人として、テレビの前でこう思います。
「サッカー選手ってカッコエエなぁ!」

不思議ですが、他のスポーツではあまりそう感じません。
もちろん、そのスマートな見た目のせいもありますが
理由はそれ以外にも。

戦略的には、組織として統制の取れた動きを見せ
ここぞという場面では、個人が自由なプレーで魅せる。

統制と自由。
対極にあるこの二つを同時に表現できるスポーツは
他になかなか見当たりません。

「だから選手はカッコエエのか、でも監督は大変やなぁ!」
個性の強いメンバーをまとめあげ
彼らに統制を課し、自由を与える。

激闘後の西野監督、その表情からは
全ての責任を引き受けた人の覚悟と
それを全うした疲労感がありありと読み取れました。

一方、同じ監督でも
危険タックルで会見したあの人の顔は対照的。
ただ、個人的にはあまり非難する気にはなれませんでした。

自由を奪い、絶対的統制を課す監督、「王様」と
何の疑いも持たず、ただ服従するだけのコーチ・選手という「人民」。
ある日、人民の一人が「王様は裸だ」と叫んだ瞬間に
堅固なはずだった「王国」が音を立てて崩壊する。

その光景を目の当たりにして
非難する気持ちよりも、むしろ哀れを覚えました。

と、同時に
「こんな監督、どこの企業にもおるやん」と
思わず苦笑いしてしまいました。

世の中、どうしてこんなに「裸の王様」がいるのか?
それは王様に直言する人がいないから。
おかしいことを「おかしい」と声をあげる人を
周りが忖度して排除するから。

「空気を読む」と書いて「異を唱えない」と読む。
そんな翻訳アプリが皆さんの組織にはありませんか?
もし、そのアプリを皆さんが面接で立ち上げたら…。

「体育会に所属していました」と
聞いた瞬間、「イイね」ボタンをポチっとする面接官。
そんな光景が浮かび上がります。

いつ、いかなる時も組織に忠誠を尽くすことや
理不尽な指示にも異を唱えず「空気を読む」ことを
私たち面接官は
これまで体育会に求め、評価してきた。

「体育会」と書いて「使いやすい」と読む。
そんな翻訳アプリが未だに世の中の主流。
だとしたら、「裸の王様」はいなくならない。

体育会を評価する視点、質問を変えないとアカンですよね。

厳しく統制が求められる環境で
どう自分らしさを主張し、創造性を発揮したのか。
統制と自由の両立をどう図ったのか。

これを質問できるのが「世界で戦える」面接官(笑)
いつまでも陳腐なアプリを使い続けていては
面接の世界でも、日本がベスト8の壁を
突破するのは難しいと感じます。


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