高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■脱線を楽しむ余裕 (2012/04/16)

阿川佐和子さんの新書「聞く力」。
評判が良いので
早速、読んでみました。

「心をひらく35のヒント」という副題どおり
聞き上手になるためのヒントが
阿川さんの人柄そのまま
飾らない文章で書かれています。

面接と重なる部分も多く
今日はその一部を。

阿川さん、対談を始めて間もない頃は
相手の資料を全て熟読。
入念にシミュレーションを済ませ
20個もの質問項目が書かれたレポート用紙を
手元に、本番に臨んだとのこと。

面接に置き換えると
履歴書の隅からすみまで目を通して
気になるところには全てアンダーライン。
最初はこれを聞いて、次にこれを聞いて…と
準備万全の状態に似ている。

「レポート用紙の質問を覗きながら
次の質問のことばかり考えていると
肝心の相手の話が頭に入ってこない」
「相手の話を聞いていないから
話しに連続性が生まれない…」

阿川さんの言葉に
「そうそう」と頷いていらっしゃる方も
大勢いるのでは。

「事前に相手の情報を一杯詰め込んで
これと、これを聞けば大丈夫と
思うところに油断がある。
あるいは既知の情報に引っ張られ
自分自身の発見や素朴な疑問や驚きが
後回しになってしまいがち」

いちいち、ごもっとも!
これも面接と同じですよね。

手元の資料が気になって顔が上がらない。
これは経験の浅い面接官にありがちなこと。

顔は上がるものの
予め用意した質問を浴びせるばかりで
応募者の反応をつかまえていない。
次の質問につながるサインを
まんまと見逃してしまう。
これはベテラン面接官にもあてはまること。

その後
阿川さんは20の質問を3つにして
対談に臨むようになったそうですが
段取りを完全に決めない
「遊び」を残した姿勢は
面接でも重要だと日々実感します。

遊び。
質問の「余白」と言い換えても良いと
思いますが
この余白のおかげで
思わぬ話が聞けることもある。

脱線ばかりでは困りますが
脱線することで
その人の新たな一面が見られるなら
少しくらいは
許されるのではないでしょうか。

逆にいうと
脱線を楽しむという余裕。
そこに相手への尽きない興味があるならば
こちらから質問しなくても
自ら進んで話してくれるはず。

無理に話しを戻さず
しばらく自由に泳がせる。
そして
相手が泳ぎ疲れたタイミングを見計らって
本線に戻す質問をする。

とても難しいことのようですが
絶対聞かねばならないことを
始めに絞りこんでおけば
案外、どうにかなるのでは。

そうなると阿川さんのいうとおり
核となる質問の数は
やはり3つくらいが妥当かもしれません。

脈絡もなく、あれこれ聞くのは容易いこと。
あえて質問を3つに絞り込む。
面接官にとって
これはとても良い訓練になりそうです。

(次回に続く)


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