高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■ワクワクさせられるか (2013/01/25)

「採用基準」という本を最近読みました。

著者の伊賀さんは、かつてマッキンゼーで採用に携わった方。
マッキンゼーの「コンサル」と弊社の「こんさる」とでは
大きく環境は異なりますが(笑)
共感できるところも多くありました。

例えば
マッキンゼーが「分析が得意な人を求めている」という誤解についての記述。

以下、引用させていただくと
(前略)
「頭がよい」という概念を構成する能力の要素に関しても誤解があります。
「頭のよさ」を構成する要素として日本では多くの人が
数字の処理能力が高いこと、理解力が高いこと
物事の本質を見極める洞察力が鋭いことなどをイメージします。
たしかにそれらも重要なのですが、実はこれらの要素はすべて
「現状把握や分析をするための能力」です。
(中略)
「全体として何が起こっているのか」を見極めるのは現状分析として
問題解決プロセスの前半部分に必要となる能力です。
しかし、コンサルタントが問題を解決するためには
これら前半プロセスに加えて
「では、どうすればよいのか」という、処方箋を書く部分が必要です。
何が悪いのか、ということだけがわかっても、解決策にはなりません。
(後略)

この文章の「コンサルタント」を「管理職」に置き換えれば
私にも思い当たることがあります。

最近は管理職に「分析力」「思考力」を強く求めるせいか
どこの会社でも
「分析はバッチリ!」という方が増えた気がします。
ただ、その後が続かない。

個人的には
分析で立ち止まるくらいなら、多少、方向はズレていても
大まかな地図を頼りに走り回るくらいのほうが魅力的です。
いくら上手な鉄砲でも打たなければ当たらない。
ならば…と思えて仕方ありません。

本はさらにこう続きます。
「現状分析能力があっても処方箋を書く能力がないと
現状というコインを裏返しただけの解決策しかでてきません」

確かに私の経験でも
「コンペジに比べて価格が高いから売れていません」(現状分析)
「だから、原料のコスト交渉をして、価格を下げます」(解決策)
といった一面的な解決策で乗り切ろうとする人が多い。

もちろん、解決策としてはこれも「あり」なんでしょうが
アセスメントでこういう話を聞こえてくると
ちっとも「ワクワク」しない。
この本を読んでその理由が分かりました。

分析力と処方箋を書くために必要な仮説構築力とは別物。
そういうことなんですね。
逆にいうと、精緻な分析に頼らない人のほうが
大胆かつ、とても魅力的な仮説を構築することがある。

何も社外の私を魅了する必要はありませんが
上司の話を部下が「ワクワク」して聞く組織は強い。
そう考えると、処方箋を書く力は
マネジメントの観点からも
管理職にとって極めて重要な能力だと言えます。
(次回に続く)


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