高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■てまひまかけて (2015/01/09)

新年最初のコラムも
引き続き「おもてなし」のお話です。

前回は、おもてなしと時間の関係に着目して
「手際よく」というキーワードを取り上げました。
急ぐ人、せっかちな人に「チャッチャッと動く」ことが
おもてなしの第一歩。そんなお話でした。

「私(お客様)の貴重な時間を大切にしてくれる」
=「手際よく」がおもてなしの一歩目ならば
「あなた(販売員)の貴重な時間を私に割いてくれる」
=「てまひまかけて」が二歩目。
今回も、おもてなしと時間がテーマです。

自店に在庫のない商品を「てまひまかけて」探してくれる。
気の張らない料理が「てまひまかけて」調理されている。
文字どおり、その仕事に「てま(労力)」と「ひま(時間)」が加わるとき
人は心地よさを感じるようです。

お茶の世界でも
この寒い時期の茶会では、お客様のために
早くから炉で茶室を暖めたり
春を感じさせる軸を掛けたりと
ふんだんに「てまひま」をかけるといいます。

もちろん、そこに主人の「心づかい」があってこその
おもてなしですが、自分のため、忙しい時間を割いて
動いてくれた事実に心響くのが人情というもの。

確かに
忙しい店、忙しそうな人が
「じっくり丁寧、面倒がらず」してくれた。
その感謝の言葉が届く一方
暇な店、暇そうな人なのに
「ぞんざいに、面倒臭そうに」したことが
即クレームにつながるのは小売・サービス業の「あるある」。

その人に悪気はなくても、人員削減の昨今
「てまひま」を少し省いたことが
お客様からは「ぞんざいに、面倒臭そうに」映ってクレームになってしまう。
実に悩ましい問題ですね。

「おもてなしの達人」ともなると
「私の」時間という意識が限りなく薄いので
常に相手(お客様)のために
「手際よく」と「てまひまかけて」というキーワードを
上手に使い分けて行動しますが、これは例外中の例外。

普通はどちらかに強みがあるもので
面接でそれを確かめるなら
かつて「予定が詰まったとき」に
「そこで何を考え、どうしたのか?」と質問してみる。

そのとき
限りある「私の」時間をどう配分し、ピンチを脱するかを考え
行動する人は「手際よく」タイプ。

一方、仕事を依頼した人や協働者といった「相手の」時間を
ムダにさせたくない、「相手の」期待を裏切りたくないと考え
行動する人は「てまひまかけて」タイプと大別できる気がします。

後者、「私」より「相手」に対する意識が強いタイプ。
いわゆる
「人様に迷惑をかけない」という倫理観の強い日本人が
「てまひまかけて」のおもてなしを得意とするのは
ここに理由があるのではないでしょうか。

仕事始めとともに慌ただしい日常に舞い戻る一月。
でも、だからこそ
「てまひまかけて」丁寧な仕事を心掛けたいですね。

本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
(次回に続く)


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