高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■グループディスカッションの弊害 (2012/09/07)

「グループディスカッション」という面接手法。
多くの会社で取り入れられているかと思いますが
私には、どうもしっくりきません。

確かに
テーマさえ伝えれば、後は応募者が勝手に進めてくれる。
面接官にとってこんな楽なことはありません。
でも、果たしてきちんと評価できるのか?

代表的な、グループディスカッションの評価基準は
このようなもの。

・適切なコミュニケーションが取れるか?(★★★)
・適切に議論を推し進められるか?(★★★)
・他の応募者と協調しているか?(★★★)
・横道にそれた議論を正しく修正できるか?(★★)
・他の受検者に対し、適切な気配りができるか?(★★)
・時間内に結論を出すことができたか?(★★)
・的を射たアイデアを出せるか?(★)
(★は重要度)

私も何度か面接官として立ち会ったことがありますが
30分そこそこの時間内で
全員のこれらの評価をすべて終えるのは至難の業。
後で思い出そうにも、発言の少ない人は
どんな顔だったかすら覚えていない。

また
たまたま、同じグループになった人が話しやすい、話しづらい。
たまたま、与えられたテーマが話しやすい、話しづらいといった
「偶然性」をどう考慮するのかというのも非常に悩ましい。

話しやすい人・テーマだからと盛り上がったグループからは
多くの合格者が出る。
逆に、盛り上がらなかったグループからは
あまり合格者が出ない。

「たまたま」が結果を大きく左右するところも
この面接手法の大きな欠点だと私は思います。

そして最近、特に考えるのが
冒頭の評価基準はそもそも正しいのか
こういう基準を満たした人は
入社後、本当に活躍してくれるのかという疑問。

色々な会社さまに訪問して
様々な会議の場に参加させていただきますが
これをグループディスカッションに見立てると

一見、議論を強くリードしているようで
同席者の感情を置き去りにして独り突っ走る人。
(オレがいないとこの会社は回らないと公言するタイプ)

逆に
周囲の顔色ばかり見て、自らの主張がない人。
(空気を読むことが仕事になっているタイプ)

あるいは
人の揚げ足を取るばかりで、自らは行動しない人。
(弁は立つが、汗をかかないタイプ)

こうした方々が結構な確率でいらっしゃいます(苦笑)

そして彼らが
「リーダーシップがある」「協調性が高い」「頭が良い」と
社内で評価されるのを目の当たりにすると
ますます
グループディスカッションとは?これで何が分かるのか?
という疑問が頭をもたげます。

発言数が、コミュニケーション力と比例しないなら
応募者が心にしまっている思いを
やはり面接官の質問力で引き出さないといけないのでは?

そして
楽だから、短時間で多くの応募者をさばけるからと
ディスカッションを多用しすぎると
ひいては面接官の質問力の低下を招くことになるのでは
ないでしょうか?
(次回に続く)


+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
Copyrightc 2012 PERSONAL VISION INSTITUTE CO.,LTD. All Rights Reserved.
このコラムの全部または一部を(株)パーソナルヴィジョン研究所の事前承諾なく、
いかなる形式・媒体にも複写掲載することを禁じます。


コラムテーマ:<面接官のトーク術>
 バックナンバーも是非ご覧下さい □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
角がとれる前(2020/03/13) <面接官のトーク術>
天然から養殖へ(2020/01/06) <面接官のトーク術>
面接中のメモ(2019/11/01) <面接官のトーク術>
思いやり(2019/10/04) <面接官のトーク術>
「心」に働きかける(2019/07/19) <面接官のトーク術>
空機を読む力(2019/02/22) <面接官のトーク術>
良い「型」(2018/12/14) <面接官のトーク術>
お節介で言い出しっぺ(2018/09/10) <面接官のトーク術>
統制と自由を問う(2018/07/24) <面接官のトーク術>
逆風が人を育てる(2018/07/06) <面接官のトーク術>
型破りと形無し(2018/02/26) <面接官のトーク術>
二つの“きく”(2018/01/19) <面接官のトーク術>
地道に、愚直に、丹念に(2018/01/18) <面接官のトーク術>
“志望動機”って聞く意味あるの?(2017/10/13) <面接官のトーク術>
高評価な人と、そうでない人の差(2017/08/24) <面接官のトーク術>
志を語り継ぐ(2017/08/10) <面接官のトーク術>
天使のように大胆に、悪魔のように細心に(2017/04/28) <面接官のトーク術>
当たり前のことを当たり前に(2016/08/29) <面接官のトーク術>
自分から素顔を見せる(2016/06/03) <面接官のトーク術>
引き算の面接(2016/04/12) <面接官のトーク術>
リクルーターとアセッサー(2016/02/19) <面接官のトーク術>
面接官の提案力(2016/01/12) <面接官のトーク術>
スーパースターばかりが必要か(2015/11/12) <面接官のトーク術>
“辞めない”面接(2015/09/28) <面接官のトーク術>
感情を引き出す(2015/08/10) <面接官のトーク術>
誇れるものがないという人(2015/06/29) <面接官のトーク術>
本当の独自性(2015/05/01) <面接官のトーク術>
VSOP人材論(2015/03/13) <面接官のトーク術>
てまひまかけて(2015/01/09) <面接官のトーク術>
相手の時間を大切にする(2014/11/14) <面接官のトーク術>
一人二役(2014/09/26) <面接官のトーク術>
行動チェックリスト(2014/08/01) <面接官のトーク術>
問題提起の輪を広げられる人(2014/06/16) <面接官のトーク術>
ブレーキではなくアクセルが踏める人(2014/04/25) <面接官のトーク術>
物語に惑わされるな(2014/03/07) <面接官のトーク術>
個人としての動機(2014/01/24) <面接官のトーク術>
「見る」ではなく「観る」(2013/12/16) <面接官のトーク術>
“野暮”をしつこく(2013/10/04) <面接官のトーク術>
まとまりなくべらべら話してもらえたら(2013/08/23) <面接官のトーク術>
ベテランあるある(2013/06/07) <面接官のトーク術>
失敗から得た糧(2013/04/22) <面接官のトーク術>
ストーリーをつなげる(2013/03/08) <面接官のトーク術>
ワクワクさせられるか(2013/01/25) <面接官のトーク術>
「無難」からは「無難」しか生まれない(2012/12/13) <面接官のトーク術>
絶対評価と相対評価(2012/11/02) <面接官のトーク術>
グループディスカッションの弊害(2012/09/07) <面接官のトーク術>
見る力(2012/07/23) <面接官のトーク術>
時間軸に沿って(2012/06/08) <面接官のトーク術>
脱線を楽しむ余裕(2012/04/16) <面接官のトーク術>
学生だけの責任か(2012/03/01) <面接官のトーク術>
面接官も管理職も 根っこは同じ(2012/01/19) <面接官のトーク術>
一つ上の目線で(2011/11/21) <面接官のトーク術>
教えてくださいという 姿勢(2011/10/05) <面接官のトーク術>
応募者に見出しをつける(2011/07/01) <面接官のトーク術>
もし面接官がドラッカーを読んだら(2011/05/16) <面接官のトーク術>
面接官には不向きなタイプ(2011/04/07) <面接官のトーク術>
基本中の基本(2011/02/14) <面接官のトーク術>
自らの仮説を疑う(2010/12/21) <面接官のトーク術>
腹落ちを問う(2010/11/04) <面接官のトーク術>
似顔絵描きであれ(2010/09/27) <面接官のトーク術>
バイアスの悲劇(2010/08/10) <面接官のトーク術>
成長の転機(2010/07/16) <面接官のトーク術>
「なぜ」よりも「何が」(2010/06/20) <面接官のトーク術>
イメージすることの大切さ(2010/06/04) <面接官のトーク術>
聞く技術(2010/05/12) <面接官のトーク術>
選ばなかった理由(2010/04/09) <面接官のトーク術>
社員の共感(2010/03/19) <面接官のトーク術>
尊敬より共感(2010/02/25) <面接官のトーク術>
話の腰を折る(2010/02/04) <面接官のトーク術>
距離を縮め、いつ切り込むか(2010/01/15) <面接官のトーク術>
「書く」のではなく「描く」(2009/12/17) <面接官のトーク術>
表情と話の長さ(2009/11/26) <面接官のトーク術>
山と谷に着目する(2009/11/07) <面接官のトーク術>
素人にもわかるように(2009/10/16) <面接官のトーク術>
意図のある人の面接(2009/09/27) <面接官のトーク術>
WHYを中心に(2009/06/25) <面接官のトーク術>
WHYをどこに集中させるか(2009/06/02) <面接官のトーク術>
WHY・WHAT・HOW(2009/05/11) <面接官のトーク術>
興味・関心を質問に(2009/04/14) <面接官のトーク術>
Copyright © 2024 Personal Vision Institute co.,ltd. All Rights Reserved.