高萩 幸男
高萩 幸男
 (Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
 + 面接官のトーク術(79)
■表情と話の長さ (2009/11/26)

前回は応募者が歩んできた
キャリアの「山」と「谷」に着目すること
山(自慢話)と谷(苦労話)に
スポットを当てることの効用について
お話しました。

今回も引き続きこの話しを。

自慢話にしろ、苦労話にしろ
先ず私が注目するのは「表情」。

自身の過去をきちんと
清算できている人の視線や口元は穏やか。

一方、未だ過去を引き摺っている人の顔は
いくら隠しても
やはり得意気だったり
どこか苦しそうだったりする。

またそれは表情だけでなく
話しの「長さ(時間)」にも表れます。

自慢話を「延々と」喋り続ける人。
苦労話をやたら「手短に」終えようとする人

こうしたタイプも同じく過去を引き摺っている。
言い換えると
自らのキャリアにきちんと「ピリオド」が
打てていない人だといえます。

プロスポーツの世界でよくある光景。

優勝したその夜はビールかけで騒いでも
翌日は次にむけて黙々と練習する。
エラーしたその夜は落ち込んでも
翌日は成功イメージを描いてプレーに臨む。

そんな「切り替え」が
一般の私たちのような仕事でも大切だと
思うのです。

これは私の偏見かもしれませんが
「成功体験(自慢話)」が忘れられない人は
柔軟性に欠け、ゼロベースで発想することが苦手。
転職者でよくあるケースが
「前の会社はこうだった、なぜこの会社は」と
前職を引き合いに今の会社を批判
周囲から浮いてしまう。

また「失敗体験(苦労話)」が忘れられない人は
慎重すぎて、なかなか決断できない。
「また失敗するかも、失敗したらどうしよう」と
迷っているうちに時間だけが流れていく。

いかがでしょう。
他人事ではなく、たまに私もこういう状況に陥ります。
また人事の交流会などでもよく見かける光景です。
「一見、苦労話のような自慢話が長々と続く(笑)」
気をつけたいものです。

面接に話しを戻します。
こうした傾向の強い応募者なら
冒頭で述べたとおり
表情や話しの長さから窺い知ることができる。

傾向が明らかではない場合どうするか?

私なら、自慢話でも苦労話でも
「(当時)誰か自分の味方になってくれた人
協力してくれた人はいませんでしたか?」
そんな質問をしてみます。

その質問に対し、複数の名前が挙がり
彼らへの感謝の気持ちが表現できる応募者ならば
過去を「客観的」に振り返っている。

逆に
「私が…わたしが…ワタシガ…」と
「主語/一人称」の回答しか得られない人は要注意。
周囲のことが見えていない
つまり過去を「主観的」にしか捉えられず
未だ過去を引き摺っている。
私はそう判断するようにしています。

たまに「チョー客観的」な視点で
「(あの時)会社が、上司が、景気が
もっと私の味方してくれていたら!」と
グチに走る人がいらっしゃいます。

「早く過去にピリオド打ったほうがいいですよ!」
この場面でそう声に出せないのが面接官の辛いところ。
間違いなくこちらの顔には書いてあるんですが。

ま、それが読み取れる応募者なら
最初からこうならないですネ。
(次回に続く)


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