高萩　幸男コンサルタントコラム - 腹落ちを問う -| PERSONAL VISION INSTITUTE |-

高萩　幸男
　(Yukio Takahagi)

■コラムテーマ別
　+ 面接官のトーク術（79)

■腹落ちを問う　(2010/11/04)

「腹に落ちる」という言葉がありますが
話し手自身がどこまでそれを自分ごととして
消化して話しているのか。
面接ではそれを意識するようにしています。

誰しも思い当たるように
頭で「理解する」のと
体の芯から「分かる」のとでは
その後の行動が天地ほども違ってくる。

面接でよく見受けられるのが前者。
自分が頭で理解したことを自信たっぷり語る人。

学生さんにしろ
企業の重責にある方にしろ
自分が何かを調べた、分析した過程や
その結果だけを話す人は
実は「腹に落ちていない」ことが多い。

例えるなら
「○○成長率や□□生産数が前年に比べ△％ダウン
しているので、日本経済は今こういう状況にある」
といった新聞記事。
これをこのまま鵜呑みにするのは「理解」。
さらにもう一歩突っ込んで
「どうしてそうなるんだろう？」
「それはどんな意味があるんだろう？」と考えることで
真に「分かる」ようになる。

だとすると、面接で応募者が語る
「理解」レベルの事実・情報にあまり目を奪われないこと。
最悪のケース、他人が調べたことを
あたかも自分の手柄のように語る人もいるわけですし。

「自分のなかに歴史をよむ（阿部謹也著）」
という本の一節に、著者の学生時代のこんなエピソードを
見つけました。

「先生はいつも学生が報告をしますと、
“それでいったい何が分かったことになるのですか”と
問うのでした。それで私も、いつも何か本を読んだり
考えたりするときに、それでいったい何が分かったことに
なるのかと自問するくせが身についてしまったのです。
そのように自問してみますと
一見分かっているように思われることでも
実は何も分かっていないということが身にしみて
感じられるのです。」

また先日、ある会社の昇格審査の面接に同席した際
自分が手掛けた分析内容、そこから理解できたことを
とうとうと話す対象者に
こんな質問を投げかけた人がいました。

「（あなたがそれを理解したことで）
会社にどんな良いことがありましたか？」

この質問も
先の「何が分かったことになりますか？」と同じく
表面的な理解ではなく
奥にある「本質」をどう捉え、どう消化しているのか
その「腹の落ち方」を問うものだといえます。

ただ、どちらの質問も
実際の面接で使う場合は、気をつけないと
キツく聞こえてしまうかも知れません。
（でも自問するには、これくらいの刺激が良いかも）

しばらくは安部さんを見習って自問することにします。
皆さんもいかがですか？
（次回に続く）

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